ambivalence
―――――――――――――――――――――――――逃げるから、追う。
立ち止まるから、捕まえる。
抵抗するから、殴る。
服従すれば、押し倒す。
泣き喚けば、また殴る。
欲しがれば、自分から来させる。
嫌がれば、犯す。
悪循環な関係。
優しい言葉は掛けられない。
何故なら“優しい言葉”を知らないから。
誰にも掛けてもらった事が無いから、
学ぼうにも学べない。
怒鳴る事しか能が無い。
手を上げる事でしか伝えられない。
言葉を知らない俺は、
触れる事でしか
愛してると言えなかった。
もちろん、言う事を聞かなくて、
キレて憎んで殴る事も多々あるけれど、
口で言うより、手を上げるのも、
不器用さからくる、暴力だった。
そして、そんな俺に気付かずに、
其れでもミヤは傍にいた。
「好きだから」
と言った。
びくつきながら、
あの弱々しい声を振り絞って、
「好きだから、此処にいるの」
と。
俺が、
「何でオマエ此処にいるんだよ」
と聞いた時だった。
押し倒した時、
あまりにも抵抗するから、
殴って言った言葉だった。
「じゃあ、オマエ何で此処にいるんだよ。
何しに此処に来てるんだよ。
俺に犯されたいからだろ?
違うのかよ」
無茶な台詞だった。
けれど、ミヤは涙を流して、
顔を背け、殴られた頬を見せながら言った。
「そうだよ」
耳を疑った。
しかし、繰り返すようにミヤは呟く。
「好きだから、此処にいるんだよ」
ミヤの言葉が、耳の奥で木霊した。
驚いて押さえ付けていた右手を離した。
ミヤは、その手を俺の右手に重ねた。
そして、愛しそうに指の1本1本にキスをした。
「好きだよ」
と、繰り返し、繰り返し、言いながら。
其れでも、俺は
相変わらず怒鳴る事しか能が無かった。
バカなのは、よっぽども俺の方だった。
<end>
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華代ちゃんより**
因みにタイトルの「ambivalence」とは「反対感情併存」という意味があるの。
好きだけど、殴ってしまったり
憎んで暴力的になる遊汝も、
好きだから、犯されても、
殴られ、蹴られても何も言わないミヤも、
本当は厭だけど、受け入れてしまう辺り
「ambivalence」なんじゃないかと思ったので付けました。
華代ちゃんいつも本当に有り難う。
タイトルもホントその通りだよね。反対感情併存。
これも遊汝の愛情表現であり、ミヤの愛情表現なんだよね。
すごく不器用にみえるけど、彼らにはそれが精一杯で。
不器用同士で分かり合えないっぽいけど、ホントは分かり合ってるんだろうね。
精神愛なんだよねーユナミヤって。
精神愛、my boom forever (何)