Lunatic Gate
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「な、な、頼むって!」
「ぜぇったい、無理させへんからっ!」

目の前で、二人から頼み込まれて、俺は一瞬言葉を失くしてしまった。

「・・・っ、そんなん言われても・・・大体、なんで俺やねんっ。他に・・・」
おるやろ、という言葉を飲みこむ。

「・・・おらんわっ! youちゃん以外、誰に頼むんや。kiyo? shuji?嫌やっ!」
力を込めて言うyasuに、俺は、そんな、と口の中で呟いた。やからって・・・なんで、俺やねん・・・。
「kiyoとかshujiはぜぇぇったい嫌やけど・・・youちゃんやったら、なんかめっちゃそういう気になんねん」
なんで、と繰り返す俺の心の声を聞いたかのように言ったのは、ka―yuだった。

「な? ほんま、一回だけでええんや。な?」
な? って言われてもっっ!
顔の前で手を合わせてすこぉしずつ近づいてくるka―yuから、俺は一定の距離を保って後退する。

「youちゃぁぁんっ!」
yasuの懇願する声に、俺は本当に泣きそうになった。


ことの始まりといえば、今日の、雑誌の取材だった。
どうしてそういう話になったのか・・・覚えてはいない。
すっかり顔見知りになってしまった雑誌のライターさんと、
今回の取材のテーマ、『愛』についてメンバーみんなが好き勝手に自分の恋愛観を語っていたはずが、
俺が気づいた時にはいつのまにか『同性愛』の話へと変わっていた。

「このあいだ覚せい剤で逮捕されたミュージシャンも男の恋人がいたって」
ライターの加トちゃんが言った言葉にyasuが、あ、と声をあげる。
「それ、聞いた! あれ、ほんまやったん?」
「うん。・・・でも、この業界多いよ。『石を投げればホモに当たる』って言うくらいで・・・。
俺が知ってるミュージシャンだけでも」
指を折る。
「けっこういる・・・」
誰っ? と興味津々の顔でkiyoが聞いたけれど、
加トちゃんは企業秘密だと笑って教えてはくれなかった。
「・・・でも、なぁんでこの世の中にはカワイイ女のコがあふれてんのに、わざわざ同じ男に走るんかなぁ」
shujiの独り言にも似た呟きには、多分、そこに居た全員が同感だったに違いない。

「男同士、って・・・ヤって気持ちええの?」
「・・・なんで俺に聞くんだよ」
真顔でka―yuに尋ねられた加トちゃんは、苦笑して首を振った。
「さすがに俺、その経験だけはないからなぁ・・・」
あってもびっくりだ。
「ただ・・・そうやってする人たちがいる、ってことは、気持ち・・・悪くはないんじゃない?」
「悪かったらせぇへんもんなぁ・・・」
思えばその時、yasuとka―yuが意味ありげな視線をお互いに交し合った
・・・ような気がする。ぜんぜん気にも止めてなかったけど。

突然、『ひさびさにyouちゃんの家に遊びに行ってもええ?』って、
半ば無理矢理この部屋に二人で押しかけて来た時から、こういう展開にしようと考えていたのだ
ろう。おそらく。

「・・・っ、だいたい、そんなんヤりたいんやったら、二人ですればええやんかっ!」
俺の言い分は、絶対的を射ていると思う。
そんなに興味があるのなら、二人で試してみればいいのだ。
どうして、俺をそこに巻き込む?
「だって、なぁ?」
ka―yuが小さく首を傾げてyasuを見た。うん、と応えてyasuが俺を見る。
「・・・youちゃん、美味しそうなんやもん」
「はぁ?」
なんやねん、それっ。
「なぁ? けっこう美形やしぃ・・・」
それはありがとう。って、そういうことではなくて。
「だからって・・・」
「ええやん、な? ちょうどベッドもあることやし」
俺の家なんやから当たり前やっ!
俺は、この二人を部屋に上げてしまったことを心の底から後悔した。
まさか、こんな展開になるとは夢にも思っていなかったから・・・。

「・・・とにかく、アホなこと考えとらんと、二人とも・・・」
「youちゃん」
俺が言いかけた台詞は、予想外に真面目なka―yuの声で遮られた。
ぐぐ、と顔を近づけてきて、俺をまっすぐに見る。
何、と言いかけて・・・その視線に、思わず口を閉じる。
「・・・無理強いは、しとうないんや。youちゃん、頭悪うないんやから分かるやろ?
二対一、どっちが強いか、ぐらい。
俺ら本気なったら、youちゃんを押さえつけるくらい簡単やで」

俺は、あ然として言葉を失くした。・・・同時に、その言葉の意味にぞっとする。
元ヤンキーのka―yuの眼光は、射ぬかれると動けないほどに、強い。
「youちゃんも、同じバンドのメンバーに無理やり犯されるなんて嫌やろ? ・・・
どっちかやで。無理やり輪姦されるか、仲良く三人で楽しむか・・・」
こ、これは、脅迫や・・・。

「ka―yu、それは言いすぎ」
本気で怯えた俺に気づいたyasuが、ka―yuを止めた。
「輪姦す、なんてせぇへんよ。そんなん、犯罪やん。言うなら・・・和姦?」
どっちにしろ、あんまり変わってへんっ!
「な? ぜぇったい無理なことさせへんから。一回だけや。今日さしてくれたら、
二度とさせてなんて言わへん」
「・・・・・・・・・」
「youちゃんっっっ!」
もう・・・。勘弁して・・・。
整った顔を、思いっきり悲しそぉぉぉに哀願の表情でゆがませるyasuとka―yuに、俺は嘆息した。
「ほんまに・・・」
なんで俺が・・・?

「・・・一回・・・今日だけやで・・・」
呟くように言った俺に、二人は顔を見合わせて、
聞き間違いでないことを確認してから、改めて小学生のように喜んだ。



思えば。
俺は、昔っからこの二人に弱かった。
普段なら、嫌だと思ったことははっきりとその意思を伝える俺だ。
悪いけど、と俺が真顔で言うと、大抵の人は諦めてくれるのが普通なのだけど。
『youちゃぁぁぁんっ』
子犬みたいな目でこの二人から懇願されると、俺はどうしても断れないのだった。

だいたい、バンドの中でいちばん付き合いが長いこともあるし、俺だって、二人に頼み事をすることもある。
ギブアンドテイク、だ。
・・・まぁ、ギブとテイクの割合が釣り合っていない気もするけれど。
だけど。だけどっ!
今回だけは、俺は、ほんっっっとぉぉに、二人を拒めない自分を呪った。

「んぅ・・・っ・・・」
経験豊富なyasuから与えられる濃厚な口付けに、俺は情けないことに一瞬意識が飛びかけた。
何の遠慮もなく滑り込んで来た舌が、口内を柔らかく撫で、固まっている俺の舌に絡む。
解して、吸い上げる。
徐々に身体の力が抜けていく。
体温が、上がる。
「・・・youちゃん、可愛い」
さんざん唇を貪ったあと、yasuはにっこりと微笑んでそう囁いた。
この手で何人もの女の子を口説いたのだろうという、極上の笑顔が向けられる。
なんだか悔しくなって睨みつけると、再び唇が降ってきた。

可愛い、なんて言われても嬉しくないっ。
ただ、今までのように女の子を相手にするのと違う、向こうからリードされるキスは、嫌、ではなかった。
遊び人・yasuが上手いからかもしれないけれど・・・
ゆっくり、俺の心まで解そうとするかのような深く長い口付けに、身体の芯が溶けそうになる。

「・・・youちゃん、めっちゃ色っぽいわ」
yasuからキスの洗礼を受ける俺を黙って見ていたka―yuは、聞こえるか聞こえないかの声でそう呟いた。
「・・・そそる」
首筋に、柔らかくて温かいものと固い冷たいものを同時に感じて、俺はぴくりと身体を震わせた。
押し付けられた、ka―yuの唇。
冷たいと感じたのは、下唇につけられた小さなピアス。
それだけで、俺の背筋を何かが通り過ぎて行く。
「ふ、・・・っ」
本当は、怖かった。
大人の男二人に覆い被されて・・・、それがたとえ中学の時からの知り合いでも、
得体の知れない恐怖は見えない鎖で俺を戒める。
それに、気づいたのかもしれない。
意識せずにシーツを握り締めていた俺の手をゆっくりと解くと、ka―yuは代わりに自分の指を絡めた。

「・・・youちゃん。ほんとに、ええの?」
yasuが、俺の耳元で囁いた。
「・・・っ、どうせ、嫌や言うてもやめんのやろ・・・っ?」
「youちゃんが本気で嫌やって言うことはしとうない」
言いながら、yasuの手は俺のシャツをたくし上げて肌に触れた。
その感触に、背筋をまた何かが、走る。
「・・・っ、言うてることとやってることが違・・・っ・・・ぁ・・・」

声が途切れたのは、ka―yuの手が服の上から俺自身に触れてきたせいだった。
二度、三度、ゆっくりと優しく往復されて、俺は身体中の熱がそこに集中しようとしているのを感じる。
「youちゃん、嫌がってへんやんか。・・・悦んでる」
当たり前や、アホっ!
そこを刺激されて、反応しない正常な成年男子なんていない。
ベルトを抜かれる、感覚。
思わずka―yuの手を握り締めてしまって・・・なんだか、恥ずかしくなる。
「・・・ほんま、めっちゃかわええわ。なぁ、本気になってええ?」
「本気、・・・って・・・」
それには答えずに、ka―yuはあっという間に俺の下肢から服を取り去った。
空気と男二人の目に晒されて、顔が熱くなる。
上では、yasuがシャツのボタンをひとつずつ外していく。

「・・・っ、ぁ・・・」
耳たぶを柔らかく噛まれた。
それだけで、自分の中心が恥ずかしいほどに反応するのが分かる。
熱を帯びて頭を持ち上げるそれを、何の躊躇いも無くka―yuは手のひらで握り込む。
もどかしい快感が身体中を駆け上がった。
「・・・い・・・や、・・・っ・・・」
「嫌・・・? 嘘やん、こんな反応してんのに」
「ぁ、・・・っ・・・ぅ・・・」
ゆっくりと手を上下に動かされて、下肢が震えた。
同時に、yasuが俺の胸に口付ける。
突起を舌先で弄ばれて、時に軽く歯を当てられて、俺の口から意味を成さない微かな声が漏れる。
上からと、下から。
同時に与えられるダイレクトな刺激に、俺は本気で泣きそうになった。
嫌、だからじゃない。言葉で表現のできない、身体中を支配する感覚。
それに、泣かされそうになる。
今まで、愛撫をするほうだった。されたことなんて、無い。
必要以上に身体が反応してしまうのは、されることに全く慣れていないからかも知れない。

「・・・youちゃん、声、聞かせて」
無意識のうちに唇を噛んで声を出すまいとしていた俺に、
yasuは今までに聞いたことも無いような優しい声で囁いた。
「youちゃんの声が、聞きたい」
そんなこと言うたって・・・。
女でもない俺が、男の下で声をあげるなんて・・・恥ずかしすぎる。
ふるふる、と首を振る俺に、yasuは仕方ないなという顔をしてみせた。
「・・・やけど、そのうち声出さなあかんようになる・・・」
「・・・っ・・・!」
悲鳴のような声が漏れたのは、何の前触れもなくka―yuが俺の下肢に顔を埋めたから。
今まで、手のひらで刺激されていたものを口に含まれて、俺は思わず仰け反る。
これまでに付き合っていた彼女にさえ、されたことがない・・・
いや、させたことがないことを躊躇いもなく奉仕されて、どうしていいのか分からない。

「あ、・・・っ・・・ぁ・・・」
知らず知らずに、目尻に涙が滲んだ。
同じ男だから・・・『いい』ところは、全て知られてしまっているのかもしれない。
ka―yuの舌使いに、俺は震えるほどに翻弄される。
固く目を閉じた瞼の上に、ふわりと柔らかいyasuの唇が降ってきた。
「・・・ちょっと、苦しいかも知れへんけど・・・youちゃん、がまんしてな?」
・・・・・・?
うっすらと、目を開ける。
自分の指を口に含んで濡らしたyasuは、俺を見て僅かに唇の端を上げてみせた。

「・・・な、に・・・」
不安に掻き立てられて問いを口にしようとした、瞬間。
「ひ、ぁ・・・っ・・・! 何を、・・・っ」
感じたのは、自分自身でさえ直に触れたことのない場所に指を差し入れられる異物感だった。
快感どころか、嫌悪感が背中を駆け上がる。
「やめ・・・っ・・・!」
「youちゃん、知らんの? 男同士って、ここ使うんやで」
そんなん、知るかぁっ!
身を捩じらせる俺に構わず、yasuはさらに深く指を埋めた。
「力、抜いて。そんなん、締め付けられたら動かされへん」
「っ・・・ぁ・・・」
ka―yuが、硬くなった俺の身体を解すように、再び舌で俺の昂ぶりを弄び始めた。
口の奥の方まで含まれて、軽く吸われる。
「・・・あぁ、・・・っ・・・」
歓喜の声が俺の唇を割った。
溶けてしまいそうな、快感。
身体の中で、正体の分からない熱い塊が出口を求めて彷徨う。

それを見計らったように、俺の内部で、yasuの指が動きを開始した。
「・・・痛い?」
痛くは、ない。だけど・・・。
「・・・っ・・・」
なかで、指が縦横無尽に蠢く。
味わったことのない刺激。
嫌悪感が、徐々にもどかしい感覚にすり変わっていく。
「・・・な、なんか・・・嫌、やっ・・・!」
「『嫌』? ・・・嘘、『イイ』の間違いやろ? ニンゲン、正直に生きんとあかんで」
「あ、あぁっ・・・!」
嘘、を言ったつもりは無かった。だけど、オレ自身は『嬉しい』と証明する白濁した雫を滲ませている。

「・・・youちゃん、やーらしい・・・もう、指二本も入るで」
圧迫感が増えた、と想ったら、yasuの指が増やされていた。
「あ、ぅ・・・っ・・・」
「・・・イキ、そう? ・・・震えてる」
yasuの指が、『イイ』場所とそうでない場所を交互に行き来する。
俺は、もっとダイレクトな刺激が欲しくて、知らず知らずのうちにねだるように腰を揺らしていた。
「実は、youちゃんって淫乱やったんや・・・。かあいいなぁ」
「ええで。イッても」
言うと、ka―yuは俺を根元から丁寧に舐め上げて、先端を軽く吸った。
「あ、ぅ・・・っ!」

昇る。
頭の中が、白、一色になる。
ka―yuの咽喉が鳴る微かな音。
他人にイカされることの屈辱感と、恥辱感。
そして、それを上回る・・・快楽。

「・・・youちゃんの、おいしい」
息を乱した俺に、ka―yuがにっこりと微笑みかけた。
おいしい、って・・・。
「今の、youちゃんの顔、めっちゃ色っぽかった」
唇に、僅かな笑みを浮かべてyasuが言う。
色っぽかった、って・・・。
もう、反論する気にもなれない。
「・・・っ・・・ぁ・・・」
ただ、今だに俺の中にいるyasuの指が動くたびに、つい今達したはずの熱が再び上がってくる。
その感覚が、もどかしい。
まだ、満たされない。

「・・・もう、ええよ」
何だかもう、どうでもいい。どうでもいいから・・・欲しい。
自分でそう思って、自分で驚いた。
欲しいって・・・何を・・・?
「ええ、て、何が?」
主語の無い俺の呟きに、ka―yuは小さく首を傾げる。
「・・・っ、やからっ、・・・もう・・・」
自分が何を言いたいのか分からない。
思考回路が、鈍い。
ただ・・・、やはり、俺は欲しがっていた。もっと・・・ダイレクトな、刺激を。
「youちゃん、ちゃんと言わな分からへんよ」
そう言うyasuは、間違い無く俺が何を言いたいのか分かっているはずだ。・・・
そのくせに、俺に言わせようとする。
「あぁ、・・・っ・・・」
ぐり、となかで指が暴れる。
濡れた音が、妙に俺の耳に響く。
「・・・ほら、youちゃん。オレらに何して欲しいん?」
口調だけは、優しい。
俺は、ふるふると頭を振ってyasuを見た。
視界が、滲んだ涙でぼやける。
「ずるいなぁ、youちゃん。そんな目で見たら、あかんわ」
触れるだけの、キスをされた。
同時に、指を抜かれる感覚。
満たされないそこが、・・・欲しがっている。

「ka―yu、先、ええ?」
「ええよ。俺、youちゃんの顔、見とく」
妙に現実的な会話が交わされて、俺はなんだか泣きそうになった。
・・・もう、どっちでもいいから・・・。
「youちゃん、ちょっと苦しいかも知れへんけど、すぐよくなるから・・・」
男同士でヤったことなんて無いくせに、どうして分かるのか不思議だけれど、
そんなことを尋ねる余裕はない。
今までずっと繋いでいたka―yuの手が離れる。
途端に不安になって、俺は俺の上に覆い被さろうとするyasuにしがみついた。
「心配せんでええよ。・・・力、抜いて」
なんて言われても・・・。

足を抱えあげられる。
もしかして・・・いや、もしかしなくても、俺、今すごく情けない格好ではないだろうか・・・。
今までさんざん指で解されたそこに、何かが・・・
いや、何かなんて分かりすぎるほど分かっているけど・・・
固いものが押し当てられる感覚。
思わず目を閉じると、まるでそれが合図であったかのように、yasuは半ば強引に押し入ってきた。
「・・・ぅ、っく・・・」
抑えようとしても、自然に声が漏れた。
「・・・痛い・・・?」
「大、丈夫・・・っ」
指でさんざん慣らされたせいか、痛くはなかった。
ただ、少し、苦しい。
内臓が、押し上げられるような感覚。
辛いわけじゃないけど、生理的な涙が目尻に滲む。

「・・・youちゃん・・・」
すぐ耳元で、ka―yuの声が聞こえた。
うっすらと目を開けて見ると、心配そうな瞳と視線がぶつかる。
瞬間、ぐ、とまたyasuに侵入されて、俺は再び目を閉じた。
「・・・っ・・・ぁ・・・」
「youちゃん、キツイ・・・。力、抜いて」
yasuは、今の俺にとって少々難しい注文をつけると、
「・・・動くで」
ゆっくりと律動を開始した。
「・・・っ、・・・ぅ・・・」
意味の無い言葉が俺の口から、漏れる。
いちばん奥まで犯されて、ゆっくりと腰を引く。
そしてまた、深く、埋め込まれる。
何度か繰り返されるうちに、徐々に自分の身体の中に得体の知れない熱い塊が生まれてくるのを感じた。
先刻、指が辿っていた『イイ』場所を、器用に狙って緩く突かれる。

「・・・っ、ぁ・・・」
ひくん、と、俺自身の身体が別の生き物のように震える。
先刻達した俺の欲望も、今や完全復活を遂げて充分な反応を示す。
「youちゃん、よくなってきた・・・?」
yasuの問いに、俺は俺の上で額に汗の玉を浮かべている顔を見上げた。
よく・・・なってきたのかどうか、自分でははっきりと分からない。
ただ・・・、嫌ではない。
むしろ、もっと動いてもらっても構わない。
だけどそれを言葉に出すにはあまりに恥ずかしくて、
俺はただ、yasuの背中に回した手に、僅かに力を込めた。
半ば無意識のうちにしたその行動が、どうやら相当yasuを煽ったらしいということを、
俺は自分を貫いている熱いものが微妙に体積を増したことで気づいた。

「youちゃん、かわええっ」
「んぁ・・・っ・・・!」
突き上げられた。
思わず、仰け反ってしまう。
甘美、と言える疼きが確かに自分の中で生まれていた。
最初に感じた辛さは、今ではもう微塵も存在していない。
「・・・ぁ、・・・っ・・・」
yasuを受け入れているその場所が、自分の意思とは関係無く時折ひくひくと震える。
無意識に、締め付ける。
く、と咽喉の奥の方でyasuがうめいた。
「youちゃん・・・っ」
「ぁ、あぁ、・・・っ・・・」
徐々に、抽挿が早くなる。
その動きに合わせて、ベッドが微かな悲鳴を上げる。
腰を掴まれて揺らされて、俺は自分でも恥ずかしくなるような嬌声を上げていた。
甘みを帯びた声が、唇から絶え間なく零れる。
「・・・っん・・・ぁ、・・・っ!」
「・・・っ・・・!」

高みまで昇りつめたのは、yasuが先だった。
いちばん奥まで貫かれて、解放される熱。
俺の中にyasuの欲望が吐き出される。
俺も僅かに遅れて達する。
息を乱して、ぐったりした俺に、yasuは満足そうな目を向けると、
「youちゃん、サイコー」
半開きの俺の唇に軽い口付けを与えた。
俺といえば、情けないことにほとんどしゃべれる状態ではない。
「・・・っ、ぁ・・・」
自分の中からyasuが出ていく。
抱えあげられていた足を下ろされて、ようやく俺は身体を全てベッドに預けた。
甘い痺れが、今までyasuを受け入れていた場所を苛んでいる。
声を出しすぎていたからなのか、咽喉はカラカラだ。
何もする気がおきなくて・・・起き上がることさえしたくなくて、
ころんと頭だけを動かすと、じっと自分を見つめるka―yuの視線とぶつかった。

「あ・・・」
そういえば。もしかして。いや、もしかしなくても・・・。
「じゃぁ、次はka―yuな。オレ、シャワー浴びてくるから・・・。
二人でよろしくやっといて。・・・と、youちゃん、ごちそうさま」
爽やかに、まるでゲームの順番を交代するかのようにそう言い放つと、
yasuはさっさと勝手に人ん家のバスルームに入っていく。
や・・・やっぱり・・・?
yasuとの行為に没頭して・・なんて言うとすごく淫乱に聞こえるけれど・・・すっかり忘れていた。
ka―yuの、存在。

・・・ごめん、ka―yu。
二人、視線を合わせたまま、何故か押し黙ってしまう。
yasuが使い始めたシャワーの音が、聞こえる。
「・・・え・・・、えーと・・・、ka―yu・・・?」
「・・・うん?」
「・・・ええ、よ」
言ってしまってから、俺は自分で非常に恥ずかしい台詞を口走ってしまったことに気づいた。
「・・・誘ってんの・・・?」
い、いや、そう言うわけや・・・ないんやけどぉぉ。
思わず視線を彷徨わせてしまった俺に、ka―yuはくすりと笑ってみせた。
「youちゃん、可愛い」
・・・その台詞、もう聞き飽きたかも。
僅かに憮然とした顔をしてみせる。
・・・と、ka―yuはふっと真摯な表情に戻った。

「オレは・・・」
俺に向かって手が伸ばされる。
引き寄せられて、そのまま、唇が押しつけられた。
ka―yuのキスは、やさしい。
上手さで言えば、経験豊富なyasuのほうが上なのだろうけれど・・・
ka―yuは情熱的でない代わりに、いたわるように、やさしい。
柔らかい舌が滑り込んで来た時も、俺はそれを自然に受け入れていた。
緊張が解れていく。
意識せずに、自分の手がka―yuの背中にまわる。

「・・・ん・・・」
一度、唇が離れていく。
うっすらと目を開けると、切なげな瞳が俺を見ていた。
何? と言おうとした俺の唇が、再びka―yuのそれによって塞がれる。
今の、は・・・?
何か言いたげだった・・・ような気がする。
だがその疑問も、口付けの心地よさに、次第に俺の頭の中から薄れ去っていく。
・・・キスが心地いいなんて感じたのは、初めてだ。
ka―yuの手が、ゆっくり、俺の髪を撫でる。
その感覚に、何故か俺の胸は苦しくなる。
どれだけ、深いキスと浅いキスを繰り返したか分からない。
何度も何度もお互いの唇と舌と温もりを確かめ合って、
そのまま溶けてしまいそうになった時、ゆっくりとka―yuは俺から離れていった。

「・・・ka―yu・・・?」
「オレは・・・、これでええよ」
「・・・え、・・・?」
一瞬、その意味が分からずに、問い返す。
「だって・・・youちゃん、きついやろ? 今までyasuの相手しとったし・・・。オレ、youちゃん壊しとうないわ」
壊す、って・・・そんなに俺、か弱くないんやけど・・・。
だけど、実際、きつくないと言えばそれは嘘になる。
yasuが散々いいように弄んでくれたこともあって、
ほんとならこのまま眠ってしまいたいくらい体力は消耗している。
身体中がだるい。
このまま第二ラウンド、といく元気は殆ど無いに等しい。
だけど・・・。

「ka―yu・・・」
本当はヤりたいんちゃうん・・・?
そう思った俺の心を読んだかのように、ka―yuは僅かに唇の端を持ち上げる
と、
「・・・ヤりたい。ほんとは、な。youちゃん、自分で分からへんかもしれんけど、
今、めっちゃ色っぽくて・・・すぐにでも、押し倒したいくらいや」
だけど、と付け加える。
「今、youちゃん抱いたら・・・オレ、自分で自分が抑えきれへん。
youちゃんのこと、壊してまう。
もし、そんなことになったら・・・、オレは自分で自分が許されへん」

俺は、何も言えなかった。ただ黙って、ka―yuを見つめた。
言葉の意味が、よく理解できていなかったのかもしれない。
はっきり分かるのは、ka―yuが俺の身体に気を使っている、ということ。
そして、・・・自分の中に、なんだか釈然としない思いが残っている、ということ。
「・・・だけど・・・、それじゃぁ・・・」
不公平、やないか・・・?
俺は、二人の相手をすることを承諾した。いささかゴーインに、ではあったけど。
だけどこのまま止めてしまったら、俺はyasuの相手しかしていないことになる。
それは・・・あまりに中途半端で、嫌だ。
一度ヤる、と言ったからには止めたくない。
・・・それに。
・・・気持ち、良くないわけじゃない・・・。
男として、男の下で声をあげることに抵抗が無いわけではなかった。
だが、ある意味屈辱とも言えるその行為が、甘美で官能的な快感を持っていることは確かで。
・・・俺は、自分自身がそれを嫌っていない・・・どころか、むしろもっと求めていることを知っていた。
危険な、思考回路。
・・・正常じゃ、ない。
・・・だが、嘘ではない・・・。

「・・・とにかく・・・。オレは、ほんとに、さっきのキスだけで充分やから。
youちゃんやって、きついはずや・・・」
「じゃぁ・・・!」
譲ろうとしないka―yuを遮って、俺は口を開く。
「今度・・・、いつか、近いうちに・・・」
「・・・youちゃん?」
ka―yuが、形のいい眉をひそめる。
何を言おうとしているのか。
分かっている。
自分でも信じられないような事を、俺は言おうとしている。
今の俺に、いつもの自我はないらしかった。
何処からどう道を間違ったのか・・・分からないけれど、
俺は、普段の思考回路から一歩も二歩も道を踏み外していた。
「・・・ka―yuと、ヤりたい」
相対した瞳が大きく見開かれた。
俺はそのままka―yuに顔を近づけていくと、凝固したままでいる彼の唇に口付けた。
一度僅かに離して、下唇のピアスを舐める。
そしてもう一度唇を重ねる。ka―yuがぴくりと動いた、と思った瞬間、俺はベッドに押し倒されていた。

「・・・youちゃん、それ、犯罪や・・・」
「ん、ん・・・」
唇を、貪られる。先刻のキスとは違うキス。
優しいけれど、容赦なく俺を求めてくる、唇。舌。
安らぎのキスじゃなくて、欲情のキス。
・・・俺が、求めていたかもしれない、キス。
手を伸ばして、ka―yuの首に腕を絡める。
唇が離れると、透明な唾液が糸を引いた。

「・・・ka―yu」
間近で瞳を合わせて、俺は小さく彼の名を呼んだ。
「・・・大丈夫、や。辛くない」
むしろ、辛いのはka―yuの方かもしれない。
太腿のあたりに感じる彼自身が、・・・俺を欲しがっている。
まるで別の生き物かのように、息づいて。
「youちゃんっ・・・」
「・・・まさか、ここまで来て・・・もう、やめへんよな」
ka―yuの首に回した手に、僅かに力を込める。
いつから俺は、こんな台詞を簡単に吐けるようになったのか。
正常な思考回路では到底出てきそうにもない台詞が、俺の口を割る。
「・・・ええよ、壊しても」
「you・・・」
「ka―yuにやったら、壊されてもええ」
決定的な打撃、だったらしい。
ka―yuはもう、何も言わずに俺の首筋に顔を埋めた。

「・・・っ、ぁ・・・」
滲んだ汗を舌で舐め取られる、感覚。
そのまま耳まで上がっていくと、耳たぶを柔らかく、噛む。・・・くすぐったい。
「かぁ、ゆ・・・っ・・・」
「あかん。もう、我慢でけへん。youちゃん、ごめん・・・」
押さえのきかなくなったka―yuは、俺の足を抱えあげると、
そこが受け入れることの出来る状態かどうか確かめてから、ゆっくりと押し入ってきた。
「あ、ぁ・・・っ・・・」
先刻までyasuが占領していたその場所は、ほとんど苦痛も抵抗もなくka―yuを受け入れる。
いっぱいに広げられて、・・・だけどそれを悦んでいる自分がいる。

「ぁ・・・、ぅ・・・か・・・ぁゆ・・・」
「youちゃん・・・」
キスを交し合う。
ついばむような、キス。
その間に、徐々に徐々にka―yuが俺の中に自分を埋め込む。
いたわるように、俺に苦痛を与えないように、優しく。

「大、丈夫・・・? youちゃん・・・」
「動いて、ええよ・・・っ」
言葉に従ったのか、ぐ、といちばん奥まで突き入れられて、俺は思わず身体を仰け反らせた。
「あ、ぁ・・・っ」
甘い痺れが身体を突き抜ける。
今日初めて味わったはずの快楽は、すでに身体が覚えてしまっていた。
ka―yuの背中にしがみつく。
ka―yuの匂いがする。酔いそうになる。甘い、匂い。

「あ、・・・んっ・・・」
始めは、ゆっくり。
だんだん、抽挿は早くなる。
鼓動。息。早くなる。乱れる。
すでに一度・・・いや、二度達している俺は、昇りつめるのも早かった。
「ぁ・・・、もう、かぁゆ・・・っ!」
きゅぅ、とka―yu自身を締め付けるのが自分で分かる。
「っく・・・、youちゃ・・・」
同時、だった。
俺の中にka―yuが注ぎ込まれる感覚。瞬間、俺も自分を手放す。

今までで、いちばんの快楽。
まぶたの裏が、白く、灼ける。
・・・そのまま、俺は白い闇の中に落ちていった。







「・・・おはよう」
うっすらと目を開けた俺に、かけられられた声。
「・・・ん・・・」
嫌や。まだ、寝足りない。もう少し、寝かせて・・・。
毛布を引き上げて、寝返りをうとうとして・・・なんだか、自分の身体が妙にだるいのに気づく。
眉を寄せて横を向いた目の前に、yasuの顔があったのに驚いた。
「・・・yasu・・・?」
「おはよ、youちゃん」
・・・・・・
「・・・おはよう・・・」
なんで、俺の部屋にyasuが・・・?
霧のかかったような頭でベッドヘッドの目覚まし時計を見る。
午前、9時。平日。



「yasu、youちゃん、朝メシ買って来たで」
玄関から、ka―yuの声。

??

なんで、ka―yuまで・・・?
まだ眠い、睡眠足りない、と叫ぶ脳みそに打ち勝って、
仲良くしたがる上のまぶたと下のまぶたを引き離して、俺はゆっくりと起き上がった。
と、同時に。

「・・・っ・・・!」
あらぬところに走る、痛み。しかも、服を着ていない・・・。

!!!

・・・思い、出したぁぁぁっっ!

「・・・youちゃん?」
昨日あったことが、一瞬で、どどどぉぉぉっと頭の中に蘇ってきた。
それも、パノラマ映像アンド上質のサウンド付きで。

ひぃぃぃっっ!
確かめなくても、顔が真っ赤になったのが自分で分かる。

「・・・どうしたん?」
不思議そうな顔をして、yasuが俺の顔をのぞき込んできて、思わず俺は下を向いた。
「・・・な、なんでもない・・・」
「・・・もしかして・・・」
「痛いん?」
コンビニのビニール袋を下げたまま、ka―yuまでが近づいてきて、
「ち・・・、ちゃうっ!」
俺は頭から毛布をかぶった。

・・・お、俺はなんてことを・・・。
身体中の血が、逆流したかのような、錯覚。
二人の相手をすることを承諾したのはともかくして・・・、いや、yasuとヤったまではいいとして。
問題は、その後・・・
うわぁぁぁぁっっ!

『・・・ka―yuと、ヤりたい』
『・・・ええよ、壊しても』

自分の吐いた台詞の数々が頭の中で鳴り響く。
俺って・・・、うっわ、サイアクっ!
どう考えても、男が吐くべき台詞じゃない。
自己嫌悪、の嵐。

「・・・youちゃん? ・・・メシ買って来たで?」
「もしもーし? 何しとん?」
「わ、分かった、行くからっ!」
毛布の中から叫ぶ。
二人がベッドから遠ざかって行く気配がして、俺は思わず大きなため息をついた。
ほんっっとに・・・、俺は・・・。
自分自身に呆れて・・・ものも言えない。
涙、出そ。
シャワーを浴びていたyasuはきっと知らないだろう。
・・・けど、ka―yuはこの俺の醜態痴態を知っている・・・どころか、目の前で見ていたわけで・・・。

『ka―yuにやったら、壊されてもええ』

うあぁぁぁっっ!
心の中で叫びながらのた打ち回る。
どうして、俺はそんな台詞を吐いてしまったのか・・・。
俺は、そこまで理性を失っていた?
いや、そんなことは・・・ない・・・はず・・・やと思う・・・。
語尾が弱いのが、自分でも浅ましい。
そんなにヤりたかったんかな、俺・・・。

『ka―yuにやったら・・・』

何故、限定? yasuに、やったら、あかんかった・・・?
いや、そんなことはないはず。
そうだったら俺は、ka―yuに対して特別な感情を抱いているということになるではないか。
それは、ない。
・・・・・・たぶん。おそらく。

そこまで考えて、俺ははっとした。
もしかして、それを聞いたka―yuは・・・勘違い、しているかもしれない・・・?
かもしれない、ちゅうか、しとるやろ十中八九!
・・・俺だったら、する。間違いなく!

達した結論に、血の気が引いた。
ka―yuに勘違いされた、ということに・・・ではない。
男の俺が、男に勘違いされるような台詞を吐いてしまった、ということにだ。

俺、もう、ほんまにサイアク。
自己嫌悪、の嵐。豪風雨が吹きすさぶ。

そこへ、再びyasuの声。
「youちゃぁん?」
「わ、分かったって!」
「はよ来んと、食うてまうよぉ」
と、今度はka―yu。

・・・・・・・・・・・・・・・

俺は頭を抱えた。
行けない。・・・こんなん、絶対顔なんか合わせられへん・・・。
このまま、東京湾まで行って飛び込み自殺したい・・・。

「youちゃぁん?」
ひいぃぃぃっ。
・・・俺は、当分毛布から出れそうになかった。






END



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めぐみさんに無理言って頂いちゃいました♪
youちゃんがヤバ可愛すぎです!!鼻血もんです!!
でも、何故かyouちゃんが起きた時の、yasuにときめいちゃったんですけど!
「おはよう」とかって、やちゅりん、可愛いッスー!(え?)
そして、めぐみさんがカーユウ好きの為、ka-yu贔屓とのこと。
いや、むしろ歓迎ですから!
本当にどうも有り難うございました。
是非是非皆さんの感想お寄せ下さいませ♪

 

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