永遠-とわ-に…
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海の見渡せる小高い丘の大きな木の下、
遊汝は時が来るのをじっと待っていた。
長いスカートからは細い足首しか覗いていないが、もうその足にも力はなかった。
木の葉を揺らす風は、ただ優しく遊汝を包んでいた。
それはまさしく、もうこの世を去った樹であることを遊汝は知っていた。
彼女の足元に転がったままのオルゴールは、もう、鳴らないー



樹に初めて逢ったのは一年前の夏だった。
いつものように幼なじみの零名と二人、
学校帰りにウインドーショッピングなんかしつつ、
遊汝は毎日のハリのない生活に少しマンネリを感じていた。

「遊汝最近元気ないね。」
「え?」
パフェをつっついて居た零名が、遊汝に問いかけた。
「だって遊汝ってばさっきから紅茶かき混ぜたまんま空ばっか見てるもん。」
ソフトクリームを大きな口につっこんで、零名は続けた。
「何か心配事?」
とっくにかき混ぜられて淡い茶色になったミルクティーのティースプーンを指から離して
遊汝は微笑んだ。
「別に。疲れてるだけだから平気。」
「ふーん・・・」
少し不服そうに返事をしながら零名はパフェをたいらげた。

遊汝はどこか大人びた子だった。
金に脱色した長い髪、裾の長いスカート、短く切ったセーラーの上着、ぺしゃんこの学生鞄。
あまり良いとはされないが、その整った顔立ちに
それらは当たり前のように似合っていた。
彼女がふと見せる微笑は、とても17歳には見えないほどどことなく色っぽくて、
それでいて不思議と純粋だった。
自然と人を寄せ付ける何かを持っていた。

それに対して零名は同じ格好をしていても、どことなく子供臭い。
可愛らしい印象が強いせいか仲間も多いが敵も多い。
いわゆるアイドルタイプなのだ。

「じゃぁね、遊汝。気ぃつけて」
店を出ると、零名は迎えに来ていた彼氏の大関の元へと駆け寄っていった。
遊汝は笑いながら手を振ると家路を急いだ。


「ただいまー。ママ〜?いないのー?」
「母ちゃんなら買いモンだよ〜」
弟の橙が部屋からひょっこりと顔を出した。
「橙、お前友達呼んだね?靴くらい揃えなって言ってんじゃん、いつも」
乱雑したやたらでかいローファーが狭い玄関をだだっ広く支配していた。
注意しつつ直してやりながら遊汝が顔を上げると・・・
”ドキッ・・・”
と、どこかで高鳴った音が遊汝を駆けめぐった。
目の前に見たことのない綺麗な顔の少年が立っていたのだった。
すっと通った鼻筋、こけた頬、鋭いけれど優しさを含んだ目つき、白い肌。
薄くて花びらのような唇・・・全てが遊汝の好みだった。

それが、樹-その人だった。
樹もまた、遊汝に見惚れていた。
薄化粧を施している物の細い顔、意志の強そうな瞳、ぽってりした色っぽい唇。
樹は遊汝に理想の女性像を見ていた。

「あ・・・すいません、靴・・・」
先に口を開いたのは樹だった。
「あ、いや別に大丈夫だから・・・ゆっくりしていってね」
慌てた遊汝は紅潮していく頬を感じつつも樹にそう答えた。
「おっ?橙、あそこの美人誰さ〜?」
ひょこひょこと橙の友人達がやってきた。
「俺の姉ちゃん」
「ウソつけよ、お前!」
「デコ広くねぇもん、女?女?」
「ちげぇって!!マジ姉貴!!」
本気で反抗している橙は遊汝の一つ下の実弟だ。
「お姉さん?どうも、俺カミヤでーす」
やたらデカイ天パがそう言った。
(下心見え見え・・・)
内心遊汝はあまり良い印象を受けなかった。
「もう!俺が言うからお前ら並べよ〜!姉ちゃん、俺のダチのカミヤ、それから
ユウヤ、ルイにカンナ、それとイツキ。」

(樹・・・)

「おじゃましてまーす!」
五人が可愛らしく馴染まぬ短ラン姿で深々とお辞儀をした。
でも遊汝の目には樹しか映っていなかった。

「そのセーラー・・・叉羅女ですか?」
叉羅女、というのは遊汝の通う覇叉羅女子高等学校の略だ。
珍しそうに訪ねたカンナに遊汝は頷いた。
「まさか、鮮燃蝶の特攻隊長やってる叉羅女の高橋って・・・」
「あたしのことだよ」
苦笑して遊汝が答えた。
鮮燃蝶と言えばその地域では有名なレディースだ。
自分の名がそこまで有名だとは。
遊汝は複雑で笑ってしまった。

「うっわー!!マジ俺憧れてたんス!」
「橙〜!俺お前とダチってて良かった!」
「高橋さん、握手いいスか?」
「ちっきしょー、カメラ持ってくれば良かった!」
樹はごくっと唾を飲んだ。
叉羅女の高橋遊汝・・・もっとイカツイ女かと思っていたがこんな人が?!
あんなに細い腰で単車にまたがっているのか?!
樹は軽い人間不信になって絶句した。

「じゃぁ橙が祖麗慰遊で走ってんのは・・・」
「馬〜鹿、そりゃ橙の親父さんが第一代目総統やってた伝説の
高橋-KAIKI-浩一郎さんだからだよ。てめぇら、しらねぇの?」
「マジ?!」
「すげぇ姉弟・・・」
暴走屋姉弟は恥ずかしさに照れ笑いを浮かべながら
入りたてのバイク族に囲まれ熱い視線を送られていた。



(to be continued)



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ゆねぞうちゃんからもらうのは初めてだよ、小説!
どうも有り難う♪
出だしからかなり意味深で、続きがすっごい気になりますね。
まず設定にかなり驚いたよ。アンニュイな遊汝さんの今後が気になります。。。


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