freak
―――――――――――――――――――――――――布団に包まったままで起きてこないから、
珍しく心配になって、顔を覗き込んでみたりなんかして。
「具合悪ぃの?」
「…少しね」
だるそうに答えた声は小さく、それだけで言葉の内容が充分に否定されている。
何時も以上に悪い顔色や、潤んだ眼を見れば、余計に良く分かった。
「何、いつから」
「昨日…一昨日の夜くらいからだるかったけど」
「病院行くか?」
「良いよ」
少しだけ笑う。
そうしてからミヤが付け加えた言葉に、
俺の方は少しだけ気まずい思いをした。
「昨日の方が辛かったし」
「…そっか」
「あのさ、」
「ん?」
「寝てても…良い、かな。起きると、頭ガンガンする…」
「…寝てろよ」
具合が悪いですと言わんばかりの、掠れた小さな声と熱っぽい眼で、おずおずと聞いてくる。
こんな時まで気を遣わせている――と言うか、怯えさせているのかと思うと、益々心が痛んだ。
目を逸らして、無愛想に答える。
「病人らしくしてろ」
「うん…ありがと」
また、薄らと笑った。
そんなミヤに何か言葉を返そうかと思っても、特に云うべき言葉が出てこない。
仕方なく背を向けた俺を、不安そうな声が追いかけてきた。
「何処行くの?」
「食いモンと、薬買ってきてやる」
「あ…」
言い残して、部屋を出る。
敢えてドアを閉めなかった向こう側から、ミヤのひとり言が微かに聞こえた。
「なんだ、良かった…」
…ってことは、俺がアイツを見捨てて出て行くとでも思ったんだろうか。
否。
前なら、そうしてただろう。確実に。
ベッドから引きずり下ろして、蹴りの一つや二つも入れて、
軽く強姦くらいしてたかも。
それをやらなくなったってことは――しかも食いモンだの薬だの、
それって結局、相思相愛になってしまったんだろうか。俺らは。
虫の良いことを、とは自覚しつつも。
昨日の方が辛かったと言われて、昨日来てやれば良かった、なんて思うあたりがもう重症。
それが厭とは云わないが、何だか俺の方が深くが溺れてるようで、少し居心地が悪い。
俺のこの、柄にも無い言動を、アイツは今頃どう思ってるんだろう。
「…あーあ」
訳もなく溜息が洩れた。
―――――――――――――――――――――――――
「とにかく完結させる」ということの訓練として、
ネタ〜仕上げまで頑張ってみたもの。
言いたい事は何だろう…病人には優しくなれる心理とか?(しょうもない)
それと、アンケートで「遊汝=鬼畜」をやたら見たので、
それに逆行したくなっただけかもね。(何)
だってさー、鬼畜なだけの人間には誰もついていかないと思うよ…。
遊汝さんもほんとは溜めこんでる人間だと思うものー。
ミヤ、癒してやってくれ。(誰よ)
2001.0815. 雪緒